あなたはこの夏、彼女と山にドライブに行ったとする。あるいは職場の同僚同士、同年代のメンバーでピクニックに出かけたとする。
誰かが尿意をもよおしたのだが、周りにトイレは見あたらない。仕方がないので林の中でことを済ませることにした。しばらくすると、林の中で大きな悲鳴が!
「どうした!」熊でも出たかと慌てて飛んでいくと、彼、あるいは彼女が自分の足の先を指し、「こんなのに噛まれている!」と叫ぶ。見るとそこには、まん丸く膨らんだ吸血鬼が食らいついていた。
ヤマビルである。蛇やクモに負けず劣らず、ヒル(蛭)は気持ち悪い生き物である。おまけに人の血を吸う。これが温暖化の波に乗って、日本全国の山々に広がりつつある。今や、房総半島にも、丹沢にも、北海道にもヤマビルは生息している。観光客や山歩きをする人にとっては大きな問題だ。
現役時代、わたしはネパールに駐在していた時に山道をよく歩いたが、夏の雨季にはヤマビルだらけだった。何度もかまれた。山道で小便をしていると周りにいっぱいヤマビルがいて、頭を持ち上げて近づいてくるのだ。ピョンピョン踊りながら逃げたが、すでにかまれていた。
●山の吸血鬼、ヤマビル
ヤマビルは、きわめてハイテクなセンサーを持っており、人の体温や発散する二酸化炭素を感知して、頭を振り上げながら進んでくる。怖い。しかも驚くほど素早い。
木の上にいて、人の体温を感じるとパラパラと頭の上に落ちてくるヤマビルもいる。気色悪い。音もなく素早く人に接近し、靴に取り付いて靴から靴下の上まで上り詰め、そこで足の肌にかみつく。この間、まったく分からないステルス性を持っている。かみつく時にはきわめて巧妙な技を使う。かむと同時に麻酔を注射するのだ。したがって痛いどころか、かまれたことも分からない。
歯医者さんの麻酔注射を思い出してほしい。「はい、チクリとしますよ」と、最初のチクリだけはしっかりと感じるはずだ。しかしヤマビルがすごいのは、最初のチクリすら感じないという点。これには独特のノウハウがあるはずで、医療の麻酔にはヤマビルのかむ方法を応用できるのではないかとにらんでいる。
話を戻そう。かむと同時に注射するのは麻酔だけではない。血液が固まらないようにする成分まで注射してくるあたり、えげつない。血液が固まらないのだから、血はいくらでも出てくる。飲み放題なのだ。血を飲みすぎた結果、あの平べったいヤマビルは、コロンコロンに丸く膨らんでしまう。
血を固まらないようにするこの成分は、脳梗塞予防に使えるかもしれない。実はヒルは、欧州や中東では、悪い血を吸い取る「瀉血(しゃけつ)」という治療法のために古くから使われてきた。それにどのような医学的な意味があるのか筆者はよく知らないが、もしかしたらヒルは黒焼きにしたら漢方薬として使えるのではないか……などとも思う。
十分に血を飲んだヤマビルは、かんでいるところを離して、コロコロッと地面に落下していく。かまれた人や獣は、しばらくして足元が血だらけになっていることに気づき、仰天することになる。
吸血中のヤマビルは、引っ張っても容易に皮膚から離れない。強く引くと外れるが、これを見るのはかなりショックが大きい。ヤマビルの口は真ん丸で大きく、肉と血の色の口の周りにはギザギザの歯がいっぱい付いている。宇宙から来たバンパイヤ怪獣という感じだ。かまれた後も、血はドクドクと流れ出る。牙が3つ大きく穴があいている。約10分間は出血が止まらないから、そこら中が血だらけになり余計に怖く見える。
●ヤマビルを退治する方法
ネパールでは、4月の雨季の始まりから、ヤマビルがドッと出てくる。何人かで歩いている場合、ヤマビルは先頭を歩く人には追い付かないが、2人目や3人目はひどい目にあうことになる。ネパール人は、夏の雨季に山歩きする時には腰に塩を入れた袋を持っていき、かまれたら塩をヤマビルに擦りつける。ヤマビルは、カタツムリやナメクジと同じで、塩を掛けられると、水分が出て死んでしまう。塩がなければ、タバコの火を押し付けると、熱さに驚いてかむのを止めるが、同時にお腹の中の血を全部吐き出すこともあり、血の池が生じる。
ヤマビルは毒は注入しないが、3つの牙のような歯型が傷口にいつまでも残るのも嫌なものだ。山をハイキングするときには、塩、ライター、消毒薬、ばんそうこうなどを持っていくことがよいだろう。
●ヤマビルホイホイはいかが?
5月20日、読売新聞のネット版で群馬県四万温泉のヤマビル騒動についての記事を見かけた。四万温泉協会では、毎日、観光客がヤマビルにかまれないように、塩をまいているという。それなら、アイデアマラソンの発想として、ゴキブリホイホイのような「ヤマビルホイホイ」「ヤマビルキャッチャー」を開発し、全国で公募してはどうだろう。
国土交通省(観光)、厚生省(薬)などからの支援で、大臣賞を設けて、日本中の大学生が挑戦することを企画しても良さそうだ。「ヤマビルホイホイ」を特許にすれば、世界中に輸出できるだろう。【樋口健夫,Business Media 誠】
●編集担当より
小学生のころ、1つ上の学年でヒルを飼っているクラスがあって、生き物係が毎日交代で水槽に腕を突っ込み、自分の血をヒルにやっていたのを思い出しました。あれは気持ち悪かったなぁ……。
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